ねえ、理解不能【完】
「ちょうワガママー」
せっかく挨拶までしてあげたのに、そんなことを私の背中にぶつける千草の友達は全然礼儀がなってなかったみたいだ。
振り返って、うるさい!って言ってやろうかと思ったけれど、
「あれ、俺にだけだから別にいい」
なんて。
不機嫌極まりないはずの千草がミリ単位で優しく私のことフォローしておいてくれたから、振り返るのはやめた。
その代わりに、そうだよって小さく宛のない返事を心の中でしておく。
後ろから椅子が軋む音が聞こえた。
だれかが椅子から立ち上がったみたいだ。
それが誰なのか見なくてもわかったから、私は頬のゆるまりを抑えきれない。
実力行使は成功だ。
「なに、旭、結局帰るの?」
「スクバないし」
「......旭くんまたね。明日も話したいんだけどいい?」
可愛い可愛い広野みゆちゃんの声。
だけど千草が選んだのは私と帰るという選択肢で、私は最低最悪だけど、また優越感をもってしまう。
「ん、また話そ広野、じゃーね」
はあ?って言いたくなるくらい甘ったるい声で広野みゆちゃんに返事をした千草は、憎たらしいけれど、強引にしろなににしろ私と帰ることを優先してくれたから、許してあげることにした。
千草を待たずに、歩いてゆく。