ねえ、理解不能【完】
千草の眉間のしわ、触れて直してあげようと思っただけだよ。本当にただの冗談だったのに。
「千草、」
そんな怖い顔をする理由がどこにあるんだろう。
見つけられなくて悲しいし、冗談の空回りは結構苦しい。
千草の顔をまともに見れなくて、俯く。さっきから胸がぎゅっと痛いままで、泣きたい気持ちになってくる。
朝のこととさっきの教室での出来事をもう一度丁寧に思い返してみるけれど、今までにも同じようなことを千草にしたことはあるし、いつもの千草なら全部許してくれるのに。
「……ごめんね。あのね、自分が何したか分からないんだけど、でも謝る。ひどいことしちゃってたらごめん、千草。.......はやく許してほしいよ」
聞きたいことはいっぱいあったし反論もしたかったけれど、今の千草にはこれ以外何も言えなくて。
もしも今の発言も千草の気に触って、もっと怒らせてしまったとしたら、私はもうどすればいいのか分からない。
とりあえず千草が不機嫌だから謝ったけれど、何が原因なのかは全然掴めなくて。
だけど、無意識のうちに千草をこんなに怒らせてしまっていたのだとしたら。
一番怖いのは、自分自身の鈍さだ。