ねえ、理解不能【完】
かすかな風が起きて、千草がゆっくりと振り返る。
私は怖くなって、うつむくしかなかった。
そんな私を見て、千草が許してくれたらいいのに、不機嫌すぎる態度を少しくらい悪かったって思ってくれたっていいのに、なんて思いながら落ち込んだ雰囲気を全面にだす。
こんなときでも計算してしまう自分が嫌いだ。
はぁ、と千草のため息が頭のうえで聞こえる。
.......また、ため息だ。千草、そればっかり。
呆れてるのか面倒なのか、二つの間に差異はないかもしれないけれど、後者だったらすごく悲しい。
唇をぎゅっと結んで自分のつま先を見つめる。
そうしたら、
「青、」
さっきよりも少しだけ柔らかくなった千草の声に呼ばれて、頭の上にふわりと手が置かれる。
千草の手のひらのあたたかさが強ばっていた身体を解していくみたいで、一気に安心感に包まれた自分の単純さが情けないけれど。
だって、千草のせいだ。
さっき私が触れることを許さなかった千草が自分から触れてくるんだもん。その意味はよくわからないけれど、千草が今日初めてやっと心を開いてくれた合図だとおもった。