ねえ、理解不能【完】






思わず現実を忘れて、ドアの影でニヤリと笑ってしまう。

それからすぐに、自分が今とても気持ち悪いことをしてしまったということに気がつく。




ひとりで笑ってるなんて、ただの変人だ。
それも、理由が理由なだけに。


ごまかすために口を再び動かして、口の体操をしていることにした。ドア付近で口の体操をしているのもどうなんだ?っていう話ではあるけれど。


それに、たぶん誰も見ていない。

もごもご動かしていた口を静止させる。




そうしたら、その時千草が席を立った。


うーん、と一度 背伸びをして、気持ちよさそうに目を瞑る。


そういう無防備なこと学校でもしていたんだ。可愛いじゃん、ばか。喧嘩中なのに、ふと気が緩んでしまう。

きっと、こういう部分を偶然みた女の子たちのハートにも火をつけちゃうんだと思う。罪だね。


千草は、すぐにいつもの気だるげな表情に戻って、一度廊下の方を見た。

どうやら、廊下にスクバを置いてるみたい。




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