ねえ、理解不能【完】






だけど一番気に入らないのは、広野みゆちゃんじゃなくて、私には不機嫌なくせに広野みゆちゃんには優しい態度を取る千草だ。




馬鹿じゃないの、千草。


広野みゆちゃんなんてきっと可愛いだけだ。
千草の好きな物理学も映画も何にも知らないよ。



「聞こえてきちゃったんじゃなくて聞き耳立ててたんでしょう?それと、先約とかそういうんじゃないよ。私は別に千草とはいつでも一緒に帰れるから、彼女は遠慮なんてしなくて大丈夫だよ。どうせーー 「青、」


一気にまくし立てようと思ったのに、千草の鋭い声に遮られた。



どうせーー別れるんだから。

そう言ってやろうと思ったのに、言えなかった。



中途半端に口を閉ざして、広野みゆちゃんを真っ直ぐ見る。千草の方なんて今は絶対見ない。

広野みゆちゃんのこと、睨まないでおこうと思ったのに、優しい顔なんてできなかった。




広野みゆちゃんは、唇をぎゅっとかんで、なんだか泣きそうな顔を作っていて。

何も言い返してこないなんてつまらないし、私だけが悪役みたいで嫌だ。



実際、私だけが悪役なんだけど。





< 97 / 450 >

この作品をシェア

pagetop