彼女は実は男で溺愛で

「龍臣が西園グループの後継者候補で有力候補だというのは、前に話した通り」

 私は頷いて、身を持って体験した悲惨な状況を思い出す。
 彼に話しかけられただけで、制服を切り刻まれるような、そんな世界。

「主に彼の女を探すための『親睦会』と呼ばれる催し物が開かれる」

『親睦会』
 どこかで耳にした記憶を辿り、「あ」と小さく声を発した。

「そう。史ちゃんが紛れ込んでしまった、立食パーティーのような会場。あれは、龍臣に、女を当てがうための集まりみたいなものだ」

 僅かに顔を歪ませ、染谷さんには珍しく嫌悪感を露わにした。

「女を当てがうって、あんまりな言い方じゃ」

「ああ、ごめん。いい気はしないよね」

「だって。花嫁候補、なんですよね」

 入社式の後に鼓舞された内容。
「あなたたちは、西園グループの花嫁候補なのですから」

 時代錯誤の会社だと、確かに思った。
 けれど、女性側もそれを望んでいるのなら、問題はないように思えた。

 そう考えてしまうのは、この会社の考え方に染まっているのかもしれないけれど。

 それにしたって、『女を当てがう』という表現には刺があり過ぎる。
 染谷さんは、丁寧に説明してくれた。
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