彼女は実は男で溺愛で

「私、染谷さんの気持ちを聞いて」

「うん」

 穏やかで優しい表情。
 彼の顔を見続けられずに、視線をテーブルに落として言った。

「やっぱり変わりたく、ないです」

「そう」

 ただ穏やかに打たれた相槌。

 私は悠里さんに憧れている。
 もちろん染谷さん側も尊敬している。

 だから、今のままの関係でいたい。

「俺の話を、聞いてくれるかな」

「はい」

 彼はテーブルの上で手を組み、その手を見つめるようにして話し始めた。

「俺、昔からこういう見た目で。特別女の格好をしていなくても、間違えられるようなタイプで」

 スーツ姿の彼は、男性的に見える。
 私服だと、違うのかもしれないけれど。

 彼の話は、学生時代にまで遡って語られた。

「大学生の頃、仲良くなった男ばかりの数人で話しているときに「染谷は線が細いよなあ。女装したら惚れるかも」って、からかわれて」

 悪ノリなら私も経験がある。
「史乃は、小学生料金で電車に乗れるよね」とか、言い出したらキリがない。

 その時は笑い飛ばせても、やっぱりどこか寂しい気持ちになった。
 きっと染谷さんも、同じような気持ちで過ごしてきたのだろう。
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