彼女は実は男で溺愛で

 母が人数分の麦茶を用意して、私の隣に座ると口火を切った。

「あのね、驚かないで聞いてほしいの」

 既に知っているのに、緊張して軽く握る手に汗をかく。

「赤ちゃんを授かって」

 改めて聞く内容に、改めて衝撃を受ける。
 聞き間違いではなかった。
 やっぱり、赤ちゃんが。

 俯いて、黙っていると、母は続けた。

「史乃がいいって言ってくれるのなら、莉子ちゃんにここに住んでもらおうと思って」

 思わぬ展開に目を丸くする。

 莉子ちゃんは、父の隣に座っている彼女の名前で、確か16、7。
 父の子どもではあるけれど、親権は実母の方にあり、元々父とも一緒に暮らしていなかったはず。

 母と父と再婚する身内だけの食事会で、顔を合わせたくらいの間柄で。
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