彼女は実は男で溺愛で

「いえ。私、まだまだなので、頑張らないと」

 カメラマンさんは「市村さん、ちょうど娘みたいでなあ」と目を細めて言った。

 年相応の娘だと思われていると、いいのだけれど。
 娘さんおいくつですか、と聞いて自分がショックを受けるだろうかと考えていると、カメラマンさんは思わぬ言葉を口にする。

「悠里さん、今日は機嫌がいいみたいだな。仲直りでもしたか」

「え」

 仲直りとは、それ如何に。

「付き合っているんだろう? 悠里さんと」

「え、えっと」

 なんと返せばいいのか、ここに来る悠里さんは女性の姿であって。
 私の困惑を察したのか、カメラマンさんは苦笑する。

「心配しないでも、男だってわかっているから」

「え」

「まあ、本人は隠せていると思っているみたいだが」

 これには目を丸くして、言葉を失った。

 完全にバレていますよ。悠里さん!
 彼はこんな会話がなされているとは露知らず、メイクさんと話し込んでいるのか姿が見えない。
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