彼女は実は男で溺愛で

 私は慣れてきた仕事に、新しくできた友達、それに憧れの先輩との恋話。
 それらに浮かれて、今朝は鼻歌まじりにロッカーを開けた。

 開けてから、ロッカーの中身に目を奪われ、絶句して立ち尽くす。

 ハンガーにかけられている制服は、無残に切り刻まれていた。

 昨日の村岡さんの言葉が、聞こえたような気がした。

「馴れ合って、痛い目を見ないことね」

 制服を着られるわけもなく、私服のまま席に着く。
 ロッカーに荷物を置いておくのも怖くて、足元に置いた。

 制服を着ていない私を見て、色んな人が笑っているような気がしてくる。
 もちろんそれは被害妄想で、誰も私なんて見ていない。

 誰が、どうして?

 グルグルと頭を回る答えの出ない問い。
 人間不信になりそうで、吐き気がした。
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