彼女は実は男で溺愛で

 出社してきた村岡さんに「おはよ」と声をかけられ、かろうじて「おはようございます」と返した。

 制服を着ていない私を一瞬だけ見たようだったけれど、村岡さんはなにも言わない。

 馬鹿だなって、思っているのかな。
 そんな想像をして、心の中で嘲笑する。

「市村さん、ちょっとミーティングいいかしら」

「あ、はい」

 村岡さんはノートパソコンを持ち、上司に私とミーティングをする旨を伝えに行った。
 私も立ち上げていたパソコンを一旦落とし、準備をする。

「さ、行きましょう。今している仕事の資料を全部持ってね」

「はい」

 パソコンを抱え、小さな会議室に入ると「ちょっと待っていて」と彼女は出て行った。

 お説教かなあ。

 ひと目見て、使い物にならなさそうだと思われたのかもしれない。
 きっと今の私は、ひどい顔をしている。
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