雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 大きな丸いワイングラスに、タップリとパンナコッタが入っていて、上には真っ赤なラズベリーソースがかけられて、ミントの葉がそえられていた。

 見た目だけで美味しそうと圧倒された。

「定番だから、そこに何か『艶』名物になるような一工夫がいると思ってさ、大きさに拘ってみたんだけど、どう?」

「これは、すごいです」

 ヒロヤさんは味も気になっていたみたいなので、私はすぐに試食した。

 スプーンをさしこんだとき、柔らかくとろとろとしながらもぷるんとした白いゼリー状の手ごたえがあった。

 それをすくうととろけそうなプルプルした震えがあり、それを口にしたとき、見たままに口の中でとけ、クリーミーさと甘酸っぱいラズベリーのハーモニーが広がった。

「これ、試食したときのより、美味しくなってます」

「よかった。あれから固さにも拘ってみたんだ。その固さが出るまで大変だったんだけど、真由ちゃんが気に入ってくれたのですごく自信がついたよ」

 私は虜になったように、何度もすくって味わっていた。

「それじゃ、私も同じの下さい」

 千佳が教科書を閉じて、ヒロヤさんに伝えると、ヒロヤさんは喜び勇んで用意をしだした。

 それを見てるとすごく可愛く思えて、私は笑っていたが、千佳も同じように感じているはずなのに、どこか瞳が暗く見えた。
< 202 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop