雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「ヒロヤさん、私達が食い逃げするかもしれないって、思わないんだろうか」

 その答えは用意に推測できたけど、私は冗談で言ってみた。

「そうだよね。ヒロヤさんはいつもあんな調子だから、そのうちそういう客もでてくるかもね。それでも、ヒロヤさんのことだから、もしそんなことがあって捕まえたら、まずは怒るよりも美味しかったかって聞くだろうな」

「千佳はヒロヤさんのことは何でも理解してるみたいだね」

「うん、大体はね」

 千佳は寂しげな瞳でパンナコッタを口にした。

 そこには、みのりが言っていたように、ヒロヤさんには思い人がいることも知っていると思った。

「実はさ、真由をここへ呼んでおきながら、まだ迷ってるんだ」

「えっ?」

 私のスプーンを持っていた手が止まった。

「真由と山之内君と池谷君の三角関係だけど、ここまでややこしくなってるその原因の一つがわかったんだ」

「どういうこと?」

「でも、疑問もあって、それを考えてたらある仮説が浮かんでね。そうするとなんかおかしいんだよ」

「どういうこと? 一体何の話?」

「山之内君は真由の事が好きなのは確かだと思う。真由はかわいいし、頭もいいし、性格もはっきりしていて明朗活発で、裏表がない分、気取ったところもない。申し分のない女性で、どんな男もやはり好きになると思う」

「だから、私のことはどうでもいいんだけど、一体千佳は何がいいたいの」

「あのさ、真由のこの恋、かなり根深い事情があって、それでこんな三角関係になってるって言いたいんだ」

「それで、その根深い事ってなんなのよ」

 千佳にしてはもったいぶった言い方だった。

「それがさ、私が言っていいものか、そこが迷うところなんだって。それをいうと、なぜそれに気がついたかって、私の問題にも係わってくるから」

「えっ? 千佳の問題にも係わってくる?」

 私にはちんぷんかんぷんだった。

 一体何が千佳の問題と係わっているのだろうか。

< 204 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop