雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「ゆっくり悩み事は話せたかい?」

「それが、益々悩んじゃいました」

 私は不満げに千佳の顔を一瞥してヒロヤさんに言った。

 ヒロヤさんは本気にせずただ笑っていた。

 カウンター内でごそごそとしては、手に持っていたエプロンをどこかにしまおうとしている。

 そこには試食会で身に付けていた色とりどりの鮮やかなエプロンも含まれていた。

 私はそのエプロンがしまわれているのを見ながら訊いた。

「ヒロヤさんって、沢山エプロンもってるんですね」

「うん。毎回色々なエプロン身に付けてると気分も変わってくるからね」

 ふと気がついたが、デザインや配色は違えど、今見につけてるエプロンも含め、それらのエプロンは色が沢山ついてカラフルなものばかりだった。

 そういえば、瑛太がこの店の名前の由来を教えてくれたところだった。

 『艶』──豊かな色々な色。キラキラと輝いて艶があって美しいという意味が込められている。

 最初、明彦に名前の由来を聞いたが、そのうち分かるかもしれないと素直には教えてくれなかった。

 瑛太もヒントを最初に出すほど、すぐには教えてくれなかった。

 意味を知っているものは何かとすぐには教えてくれない傾向がある。

 それも不思議だったが、その時、私は違和感を感じた。

 というより、電車に乗っていたときの拓登と瑛太の様子が変だったことを思い出した。

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