雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「いいんだよ、真由ちゃん、気を遣わなくても。そりゃ驚くよね。いきなりこんなこと聞かされて。でも、これだけは僕のありのままの姿なんだ」

「あの、その」

 どう受け答えしていいかわからずにしどろもどろだった。

 それはいいですね。

 いや、それはおかしい、この場合何を言えばいいのか全く分からず、突然額から吹き出る汗を手で抑えては、なんとか笑おうとしていた。

 そして千佳を見たとき、寂しげな瞳が揺れていたが、口元には諦めたように薄っすらとやるせない笑みが浮かんでいた。

 その時、私は何もかも理解した。

 なぜ千佳が男っぽい姿でいるのか。

 千佳は自分が男っぽくなれば、もしかしたらヒロヤさんが好きになってくれるのではという淡い気持ちを抱いてたに違いない。

 明彦が女の格好をするにしても、趣味がはいっているとはいえ、やはり姉の恋心を気にしてボーイッシュが不自然に見えないように、双子の利点を利用し、お互い心の性別が逆転しているかのように見せていた。

 だから姉思いの弟と千佳は表現していた。

『ああ、ほんと不公平だと思う。一層のこと変わってやりたいくらい。私もこんな風貌だから男だったらよかったのに』

 千佳が試食会で女装していた明彦を見て言った言葉だったが、あれは明彦のためじゃなく、自分に発した願いだった。

 ヒロヤさんがゲイだと分かれば、必然的にヒロヤさんを好きでいる千佳の心理がパズルのピースが埋まるように理解できた。

「千佳……」

 私は彼女の名前を無意識に呼び、そしてヒロヤさんを見た。

 ヒロヤさんは何も恥じることなく、私に真実が話せた事を心から喜んでいた。

 私もヒロヤさんがゲイだからといって、別に何も変わらない。

 ヒロヤさんはとても優しく、人情に厚い親切な人。

 私もこのまま変わらない友達でいたい。

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