雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「ううん、なんでもない。なんか本のこと思い出してたらちょっと異次元に飛ばされた」

「そうだよね、あの本は僕も余韻を感じて、暫くずっと考えていた」

 拓登は澄んだ瞳で、曇りのない爽やかな笑顔を見せてくれた。

 まさか、この笑顔の影に拓登がアレってことは……。

 一回疑うと、私はどうしようもなくそれに囚われてしまって、急に体がムズムズと痒くなってくるような気分だった。

「真由、もし暇があったら、連休中のいつか僕と会ってくれない?」

「えっ、あっ、うん。もちろん」

「外にでたら混み合うかもしれないけど、今度は瑛太に邪魔されないように二人でどこか行きたいな」

 さりげなくさらっと言ってくれたが、まるで魔法をかけられたように、私はその言葉で目が覚めた。

 拓登は瑛太よりも私を選んでくれている。

 普通それが当たり前なんだろうけど、はっきりと本人から聞かないと分からないこともあるだけに、私はその言葉が素直に嬉しかった。

 少しはほっとするが、ふと考えれば私達はまだ正式に付き合っているわけではなかった。

 私と拓登の関係も何かが捻じれている。

 拓登がはっきりと私との関係を決め付けるのを避けるように、付き合うことを保留状態にされた友達同士で、この先が一向に見えてこない。

 やっぱり、私は拓登と瑛太の関係のための小道具なのだろうか。

 怪しまれないように、時々まともな事を言えば、真相はその裏で誤魔化される。

 これではいつまでも堂々巡りで、疑い出したらキリがなくなってきた。

 頭がくらくらするのを必死で持ちこたえようと、摑まり棒を力強く握っていた。

 暫く、走って行くような移り変わる景色を見てたら、本当に目が回りだして気持ちが悪くなっていくようだった。

「真由、なんか顔色悪いけど、大丈夫かい?」

「えっ、あっ、流れる景色を見つめすぎたら、酔ってきちゃったのかも。大丈夫、大丈夫」

「この辺はビルや建物が密集してるからね。そういう時は遠くのものや空を見るといいよ」

 私は言われた通りに、とりあえず空を見てみた。

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