雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 阿部君がまだ私にかすかに思いを抱いていようとも、私にはどうすることもできないし、はっきり言うつもりでもいる。

 これも瑛太がこれ以上私の過去の記憶を出汁にして、変に絡んでこないようにするためでもある。

 私は決心するように体に力をいれ、気合を入れる。

「真由、さっきから落ち着きがないようだけど、一体どうしたんだい?」

「ううん、なんでもない。ほら、あれ。拓登も言ってたじゃない。雨のときはやっつけたい気持ちになるって」

「ああ、あれか。僕さ、雨の少ない地域に住んでたから、傘持つ事が滅多になかったんだ。降っても傘差さない人が多くて、濡れても平気な人たちが多かったんだ。それに慣れちゃうと傘持つのが面倒になって、つい挑戦的になっちゃうんだ」

「そっか、そういう意味があったのか。でも、その気持ち分かるかも」
 特に、今日みたいな日は降って欲しくないから、私は挑むように流れて行く景色の上でゆっくりと闇を広げている雲を睨んでしまった。

 これからがまた一仕事。

 負けてなるものか。

 複雑な気持ちを抱えている今、一つでも早く片付けたい気持ちが、やる気を奮い起こさせていた。
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