雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 駅の改札口を出て、空を見上げれば厚ぼったい灰色の雲が今にも雨を降らせようとしているようだった。

 拓登はその時、腕時計で時間を確認していた。

 急ぎの用があるのか、それとも雨が降らないうちに早く家に帰りたいのか、少しそわそわしていた。

「それじゃ真由、また電話かメールするよ」

「うん。いつでもいいから」

 拓登にバイバイと手を振り、駐輪所に走って行く拓登の後姿を見てから、私も歩き出した。

 六時の約束までにはまだ一時間はあった。

 家に帰って着替えている間に、すぐに出て行かないといけないので、そんなにゆっくりしている暇もなかった。

 待ち合わせの神社までは、自転車でいかないと歩いてでは遅くなってしまう。

 雨も降りそうなときに自転車に乗って出かけるのも嫌だったが、降らないことを願うしかなかった。

 阿部君とは久し振りに会うが、すっかり記憶から抜けていただけに、いざ会うとなるとどんな顔をして会えばいいのか少し戸惑う。

 顔は小学六年生のときに会ったのを最後に、その時の面影をなんとなく覚えているだけだからいまいちはっきりと分からないものがあった。

 会えばまた思い出すだろうけど、小学六年生の時はメガネをかけていて、見るからに賢そうなお坊ちゃま風だった。

 どんな風に変わっているのだろうか。

 子供時代にあまり接触を持たなかったけど、それでも知り合いには間違いないが、そんな人と会うことも、その理由が過去の記憶のためというのも、ひたすら変に思えてくる。

 気が乗らないけど、しなくてはいけない無理やりな任務のようで、体に異様に力が入っていた。

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