雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「倉持さん?」

「阿部君?」

 お互いの名前を呼んだところで、安堵感が広がった。

 私も阿部君の方へ歩み寄り、お互い向かい合った。

 まだ薄っすらとした光があったので、近づけばお互いの顔がまだよく見える。

 久し振りに会ったものの、やはり面影は残っていて、それが阿部君だという事がはっきりと認識できた。

 銀縁のフレームがインテリっぽく、背筋を伸ばしてぴしっと立ってるところは身なりのいいお坊ちゃま風で、昔から勉強ができるイメージがあった分、このときもかしこそうな雰囲気が漂っていた。

 暫くはお互いの姿を確認しあっていた。

「待たせてしまったみたいだね。ごめんね」

「私も今きたとこだから。わざわざ来てくれてありがとう」

 雨はそれほど降ってなかったが、私はすでに傘を開いて肩に持たせかけていた。

 雨がふりそうだというのに阿部君は傘も持たないでここに来てくれたようだ。

 家が近いのだろうか。

「阿部君の家はこの辺りなの?」

「いや、違うんだけど」

 雨が少しずつ降ってくるが、阿部君は気にすることもなく私をじっと見ていた。

「あの、雨が降ってきたけど、大丈夫?」

 私が傘を差し出そうとするが、阿部君は首を横に振って遠慮する。

 まだ本格的に降ってるわけではなかったので、私も差し出した傘を引っ込めた。

「ここにいたら濡れちゃうから、どこか行こうか」

「ここでいいよ」

 突然の雨で、私は阿部君と会う目的がなんだったか忘れそうで、少し戸惑っていた。

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