雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「瑛太なの?」

「よぉ、真由。こんなところでデートか? へぇ、相手は茂じゃないか。頭のいい者同志、中々似合いのカップルだね」

「ちょっと瑛太、何を言ってるの? あんたここで何をしてるのよ」

「瑛太、もういい加減にしないか。僕は疲れたよ。やっぱり僕には重荷だ。やっぱり嘘はだめだよ。倉持さん、ごめんね」

「阿部君、どうしたの?」

「どうもこうもないよ。僕は瑛太とグルで嘘をついてたんだ」

「えっ、嘘?」

「おいおい、茂、それはないだろ。この場に及んで何いってんだよ」

 それでも瑛太は慌てることなく余裕タップリに落ち着いていた。

「ちょっと待って、嘘ってどういうこと? じゃあ、キスをした人って阿部君じゃなかったの?」

 阿部君は一つため息を吐いた。

「あの時、確かに僕も一緒にそこに居たんだ。囃し立てた一人としてね。倉持さん、よく思い出してごらん、あの雨の日、君の後ろに三人いたはずだ。一人は僕で、もう一人が瑛太。その最後が、君にキスをした奴だ」

「で、その人は誰?」

「倉持さんが手紙を書いた子だよ。倉持さんの席の隣に座っていた子だよ。覚えてないかい?」

「おいおい、茂、そんなヒントなんてやる必要がないんだよ。なんで急に裏切るんだよ」

「何を言ってるんだ。別に裏切ってるわけじゃない。ただ僕はもうゲームには付き合いたくない」

 阿部君は静かに言い返していた。

「ゲームって何?」

「倉持さん、全ては君の記憶にかかっている。それを思い出さないことには、君もこのゲームから抜け出すことはできないよ」

「ちょっと、まって、阿部君。私はゲームなんて参加してないし、何のことかわからないんだけど」

「良く考えてごらん。なんでこんなことになっているのか。それは倉持さんが過去の事を思い出せないからなんだ」

「私が思い出せない事が、どうしてゲームになるのよ。瑛太、一体どういうことか説明して」

「おいおい、そう突っかかるなよ。全てが俺が悪いみたいじゃないか。まあ、煽ったのは俺だけど、でも最後まで頑なにこのゲームを続けると言った主犯者は俺じゃない」

「だったら、一体誰よ」

「それが、真由にキスした犯人に決まってるじゃないか」

 瑛太は吐き捨てるように言った。

「倉持さん、思い出してごらん。君の隣に座っていた男の子のこと」

 瑛太とは対照的に、阿部君は催眠術をかけるように、落ち着いた声で私に施す。

 隣の席に座っていた男の子。

 手紙を書いて渡したけど、私はもらえなかった。

 でもその手紙がすごく欲しくて、ずっと探していた。

 なぜ、その手紙が欲しかったのか。

 それはその男の子の事が好きだったから。

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