雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 その後、その男の子とは会う事はなかった。

 なぜ、会わなかったのだろうか。

 考えたら、すぐに答えがでてきた。

 それはあの男の子が、引っ越したからだ。

 中々思い出せなかったのは、ずっと会わずにいたからいつしか私の記憶から抜けていた。

 手紙を書いたときの事を当時の気持ちになって考えてみる。

 引越しをするから寂しくて、私は手紙に正直に好きだと書いた。

 大きくなったら絶対に会おうねってそんな言葉も添えたと思う。

 そして、どこに行ってもがんばれ!って最後に書いた。

 がんばれ……

 この言葉が刺激となって、何かが引っ掛かる。

 がんばれ…… がんばれ……

『僕は頑張れっていう言葉で頑張ってきたんだ。その言葉が好きで、ちょっと真由に言って貰いたかっただけ』

 突然、拓登が以前言っていた事を思い出した。

「あっ!」

 私は声を上げた。

 でもまさかという気持ちの方が強くて、ぴったりと記憶と当てはまってもまだ信じられない。

「どうやら、何か思い出したみたいだね」

 阿部君が肩の荷が下りてほっとするように言った。

「うそだろ。真由が覚えてる訳がないって」

 ケチをつけたいといわんばかりに、冷めた口調で瑛太がいった。

「でも、どうしてこんなことに。嘘。だけど、だったら、なぜ」

 私はこんがらがって、支離滅裂になりながら、一人で何度も自問自答する。

「真由、思い出したんだったら、そいつの名前をここでいいなよ。そいつも現れるかもしれないぜ。あの境内の裏から」

「えっ? それって、拓登もここにきているってこと?」

「ちぇっ、本当に思い出しやがった。拓登! よかったな。これでゲーム終了だ」

 瑛太は暗闇に向かって叫んだ。

< 233 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop