雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 ゲーム終了って、それどういうこと。

 私は心の中でつぶやいていた。

 暗闇の中から、人影がぼんやりと見えた。

 それはゆっくりとこちらへ向かってくる。

 辺りは相当暗くなって、仄かにどこからか漏れてくる光でなんとか姿が見えるくらいだった。

「真由……」

 私を呼ぶ声で、それが拓登だと言うのが識別できた。

「一体、これどういうこと?」

 どうしてもゲームという言葉が引っ掛かって、折角思い出しても何もすっきりとしなかった。

 雨が降っているのに、暗闇に溶け込んでしまって全く目では見えなかった。

 でも傘を持ってる私だけが、ぽたぽたと上から落ちてくる雨の滴を感じていた。

 傘を持っていない三人は確実に頭上に雨が降り注いでいるのに、それすら感じられないくらいにこの状況に気をとられているようだった。

 拓登はどう説明していいのかわからないのか、時折小さく声が漏れていた。

 それを見かねて瑛太が口を挟んだ。

「早く言うとだな、拓登は真由が自分の事を覚えているのか確かめたかったってことだ。拓登は自信があったんだよ。真由が絶対覚えているって。でも、俺は忘れているって言っちまった。そこで俺たちは賭けをすることになったって訳」

「賭け……」

「瑛太、茶化すのはやめてくれないか」

 拓登が不快な気持ちを露にした。

「何、言ってんだよ。俺が絶対に真由は思い出せないから、素直に自分の正体を話した方がいいっていったのに、拓登がムキになって、絶対思い出すまで自分から昔のことは言わないって言ったんじゃないか。そこで、思い出さなかったときは俺の勝ちになるぞって煽ったら、そんなことにはならないとか言ってさ、拓登も意地を張るから結局賭けをしたようなもんさ。俺はこれでも真由が思い出すように手伝いをしてた方なんだけど」

「それじゃ、二人はお芝居をしていたのね」

 私がそういうと、拓登も瑛太も暫く黙り込んだ。

 二人は口裏を合わせて、初対面のフリをしながら、私が思い出すか思い出さないかを常に見ていた。

 拓登が私に近づいてきたのも、瑛太がからんできたのも、私は試されていたに過ぎない。

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