雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 私が手紙をなくして、当時の拓登の気持ちを知らずに、ずっと幻影だけを追ってここまで来たことに。

 雨はどの程度降っているのだろう。

 いつまでもここにいては、傘を持っていない三人は濡れてしまう。

 それでも私は何も言えない。

 三人も雨に囚われているようにその場から動けないでいるみたいだった。

「なんかさ、しらけちまったな。俺たち一体何をしてたんだろうな」

 瑛太に言われると、くすぶっていた感情がとりとめもなく一塊になって飛び出してしまった。

「結局はゲームだったんでしょ!」

「おいおい、真由、何を怒ってるんだよ。怒るんなら俺じゃないだろ。事の発端は拓登なんだから」

「真由、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ」

「だったら、こんなに回りくどくなる前に、もっと早く言って欲しかった。試されて、それを観察されてるなんてお遊び感覚じゃない」

「だから、謝ってるじゃないか。真由だって手紙を失くさなければ、僕が誰だかすぐに思い出したかもしれないのに」

 手紙の事を持ち出されるとつらい。

「それじゃ、失くした私が一番悪いってことね」

 痛いところを突かれたせいで、自棄になってしまった。

 拓登も自分の手紙が失くされたことに対して、すぐに割り切れなかったのだろう。

「別に責めてるわけじゃないんだけどさ、僕、あの時、日本を離れてアメリカで住まなければならない心細さがあったんだ。実際向こうの生活に慣れるにはものすごい時間もかかったし、言葉が違うのもすごいストレスだった。それでも真由の手紙を何度も読んで、がんばれっていう言葉に励まされて、子供心ながらにがんばった。僕の気持ちも真由に伝わってるって思っていたからこそ僕はずっと真由の手紙を大切にしてきたんだ。まさか、読まれてないとは思わなかったよ。なんだか、僕も気が抜けた。真由にはなんの罪もないのに、八つ当たってごめん」

 お互い、身勝手な言い分だとは分かっていると思う。

 その気持ちも、自分にしか理解できないだけに、うまく伝えられずにやるせないし、一人で空回りしていた気持ちが虚しくて、私と拓登はこの暗闇に染まるように心にも闇に囚われているようだった。

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