雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 色白な優男風で、四角いフレームのメガネをかけているところがインテリな雰囲気がする。

「ヒロヤさん、こんにちは」

 普段あまり感情を顔に表さない千佳がにっこりと愛想のいい笑顔を見せている。

 かの子はそれを見逃すことなく、何かを感じ取るようにじっと見ていた。

 私達は一番奥のテーブルに座り、喫茶店を見回した。

 世の中、沢山のコーヒーショップがあり、今時らしくスタイリッシュで都会的なおしゃれ感があるが、それとは違って手作り的でアットホームな感じがとても居心地よかった。

 ヒロヤさんがメニューと水を運んできて、にこやかに千佳に話しかけた。

「千佳ちゃんが友達連れて来てくれるなんて嬉しいな」

 千佳が私達をヒロヤさんに紹介すると、ヒロヤさんは一人一人の名前を嬉しそうにちゃん付けで呼んでいた。

 人懐こいその態度は、どこか世話好きの匂いがする。

 コーヒーの柔らかなアロマと共に、ヒロヤさんは人を和ませる温かい気持ちにさせてくれた。

 その時のヒロヤさんを見る千佳の瞳はキラキラしていて、学校では見せない生気溢れたものが出ていた。

 私だけでなく、かの子とみのりも同じように感じているのか、時々目が会うと何かを言いたい意味ありげな顔をしていた。

 私達は、ヒロヤさんが焼いたという特性のケーキと紅茶を頼んだ。

 焼きっぱなしの素朴なケーキだが、タップリと生クリームを添えて食べるのがとても癖になるほど美味しかった。

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