瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
「改めまして、私はノイトラーレス公国君主ゾフィ・ノイトラール。まもなく十八になります。お目にかかれる日を心待ちにしておりました」
ゾフィの視線はまっすぐにクラウスに注がれて、不意に彼女の表情が不安めいたものになる。
「……僭越ながらお伺います。私を覚えていらっしゃいますか?」
「ああ」
抑揚のない短い返事にゾフィは花が咲いたように笑った。彼女は前国王の時代に囚われの身となり地下でクラウスと対面した。
「あのときは大変、お世話になりました。ここに私がいるのも陛下のおかげです。我が公国とアルント王国との未来永劫の友好の証としてなんなりと差し上げましょう」
ゾフィの周りには幾人かの護衛を兼ねた剣士と侍女が待機し、頭を下げつつ成り行きを見守る。クラウスは彼らをぐるりと見渡し、再びゾフィに視線を向けた。
「なんでもかまわないのか?」
「ええ。陛下が望んでくださるのなら私自身でも。私は陛下に命を救われた身ですから」
ゾフィの発言がどこまで本気なのか計り知れない。緊張感を伴う静寂の後、クラウスが口を開く。
「なら、遠慮なく頂いていこう」
そう言って一歩踏み出し、ゾフィとの距離を徐々に縮めていく国王を周りは固唾を呑んで見守るしかない。ただ、ゾフィは少しだけ期待混じりの瞳でクラウスを見つめた。
幼い記憶の中に残る彼は、宣言通り国王になった。成長して男性としても国王としても申し分ないほどの魅力と能力を兼ね備えている。
あのときは手が届かなかった存在だが、今は違う。この日をずっと夢見てきた。
いつかクラウスと対等な立場となり、幼い頃に本で読んでもらったおとぎ話の王子のように彼が膝を折って自分を乞うことを。
ゾフィの視線はまっすぐにクラウスに注がれて、不意に彼女の表情が不安めいたものになる。
「……僭越ながらお伺います。私を覚えていらっしゃいますか?」
「ああ」
抑揚のない短い返事にゾフィは花が咲いたように笑った。彼女は前国王の時代に囚われの身となり地下でクラウスと対面した。
「あのときは大変、お世話になりました。ここに私がいるのも陛下のおかげです。我が公国とアルント王国との未来永劫の友好の証としてなんなりと差し上げましょう」
ゾフィの周りには幾人かの護衛を兼ねた剣士と侍女が待機し、頭を下げつつ成り行きを見守る。クラウスは彼らをぐるりと見渡し、再びゾフィに視線を向けた。
「なんでもかまわないのか?」
「ええ。陛下が望んでくださるのなら私自身でも。私は陛下に命を救われた身ですから」
ゾフィの発言がどこまで本気なのか計り知れない。緊張感を伴う静寂の後、クラウスが口を開く。
「なら、遠慮なく頂いていこう」
そう言って一歩踏み出し、ゾフィとの距離を徐々に縮めていく国王を周りは固唾を呑んで見守るしかない。ただ、ゾフィは少しだけ期待混じりの瞳でクラウスを見つめた。
幼い記憶の中に残る彼は、宣言通り国王になった。成長して男性としても国王としても申し分ないほどの魅力と能力を兼ね備えている。
あのときは手が届かなかった存在だが、今は違う。この日をずっと夢見てきた。
いつかクラウスと対等な立場となり、幼い頃に本で読んでもらったおとぎ話の王子のように彼が膝を折って自分を乞うことを。