瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 大胆にレーネからも相手を求めようとしたところで口づけは中断された。

 残念なようで、肺に空気を送り込み乱れる呼吸を整える。ぼやける視界の焦点を定めようと瞬きを繰り返していると、クラウスが再びレーネの服に手をかける。

 たゆんだドレスはあっさりとレーネの白い滑らかな肩を剥き出しにさせ、滑り落ちていく。肌を晒す羞恥心より張り付いていた重い衣服から解放されたことにほっとする。

 体から離れたドレスは浮力で湯面に漂い邪魔になるのでさっさと取り払われた。

 されるがままだったレーネだが心許ない姿になるとやはり気恥ずかしさが出てくる。相手が服を着たままだから尚更だ。

「……どうして私だけ脱がすの?」

 おずおずと尋ねるとクラウスはレーネの顔に手を伸ばし、頬に張り付いている黒髪をそっと耳にかける。

「脱いで欲しいのか?」

 余裕たっぷりに返され、レーネは口を尖らせる。そういう話でもない。

「だって、いつも……」

 思わず衝いて出たが、先は続けられずに口ごもる。今だけの話ではなくクラウスはレーネを抱くときもあまり素肌を晒さない。

 こちらはすべてをさらけ出しているのにだ。彼が自分にいい感情を持っていないと思っていたので受け入れていたが、本当は少しだけ寂しかった。

 けっして対等にはなれないと思い知らされているようで。
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