瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
「欲しくはないか? 絶対的な力を」
低く冷たい声が誘惑してくるが、なにひとつ心動かされない。国王はそっとクラウスから離れた。一方的に錠の鍵を彼に手渡す。
「憎らしいことにお前は印を持って生まれた。次期国王になるならフューリエンを懐柔させてみろ」
力を試すつもりなのか、ただ押し付けられただけなのか。おそらく嫉妬だろうとクラウスは結論づける。自分にはない印を持つクラウスが憎いのだ。
王家には迷信めいた言い伝えがある。王の素質を持つ人間には、生まれたときから同じ個所に痣があるというのだ。ただの偶然かもしれないのに、いつのまにかそれを印とまで呼ぶ者さえいる。
我が子を王にするべく、生まれて間もない赤子にわざと傷を負わせ痣をつくった者もいるほどだ。
信心深さは一歩間違えれば狂気だ。フューリエンに関しても同じことが言える。クラウスは皮肉めいた笑みを浮かべ国王が消えて行った先を見つめた。
「絶対的な力、ね」
そんなものを信じて縋ろうというのなら、あの男もたいした器じゃない。
クラウスは目線を再び部屋の中の少女たちに向けた。異なる色の瞳に恐怖を滲ませ、体を震わせている少女に声をかける。
「そんな目をするな。取って食おうというわけじゃない。名はなんと言う? フューリエン呼びは嫌だろう」
少女はなにも答えずに目を伏せた。もうひとりの黒髪の少女は金髪の少女のそばに寄り添いながらも、さっきからこちらを見ようともしない。クラウスは気にせず続ける。
低く冷たい声が誘惑してくるが、なにひとつ心動かされない。国王はそっとクラウスから離れた。一方的に錠の鍵を彼に手渡す。
「憎らしいことにお前は印を持って生まれた。次期国王になるならフューリエンを懐柔させてみろ」
力を試すつもりなのか、ただ押し付けられただけなのか。おそらく嫉妬だろうとクラウスは結論づける。自分にはない印を持つクラウスが憎いのだ。
王家には迷信めいた言い伝えがある。王の素質を持つ人間には、生まれたときから同じ個所に痣があるというのだ。ただの偶然かもしれないのに、いつのまにかそれを印とまで呼ぶ者さえいる。
我が子を王にするべく、生まれて間もない赤子にわざと傷を負わせ痣をつくった者もいるほどだ。
信心深さは一歩間違えれば狂気だ。フューリエンに関しても同じことが言える。クラウスは皮肉めいた笑みを浮かべ国王が消えて行った先を見つめた。
「絶対的な力、ね」
そんなものを信じて縋ろうというのなら、あの男もたいした器じゃない。
クラウスは目線を再び部屋の中の少女たちに向けた。異なる色の瞳に恐怖を滲ませ、体を震わせている少女に声をかける。
「そんな目をするな。取って食おうというわけじゃない。名はなんと言う? フューリエン呼びは嫌だろう」
少女はなにも答えずに目を伏せた。もうひとりの黒髪の少女は金髪の少女のそばに寄り添いながらも、さっきからこちらを見ようともしない。クラウスは気にせず続ける。