瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 レーネは人の気配を感じ、そっと目を開ける。そのタイミングでドアが開き、部屋の主であるクラウスが顔を出した。

「来ていたのか」

「タリアに無理矢理ね」

 意外だと言いたげな面持ちにレーネは素っ気なく言い返す。今日は宣言通りタリアに一日城の中を案内され、あれこれと説明された。

 昨日は夜遅くに到着したので暗さと静けさに包まれていたが、朝昼の城はそれなりに人もいて活気づき、また違った顔を見せた。

 廊下につけられた窓はどれも高い位置にあり、そこから降り注ぐ太陽光を内部でうまく反射させ、明るさを保っている。磨かれた床は壁と同様に外からの光を受けて輝いていた。

 中庭をぐるりと囲んで建てられた構造上、方向は掴みやすい。王に関する部屋は城門から遠いのは難儀だが今のところ城外に出るつもりも用事もないので、大きな問題ではなかった。

 アードラーに宛がわれた部屋や客間をはじめ書物庫に使用人たちの居住空間や食堂、大広間など、あらゆる用途を目的とした部屋がいくつもある。

 使われていない部屋も含めれば果てしない数と広さだ。

 改めてレーネが日中に過ごせるよう部屋が用意されていたが、夜はこうして王の寝室に連れて来られてしまった。

 自分がノイトラーレス公国を背負っていなければ、と思ったもののどうしようもない。さらにレーネ自身も侍女だったのでタリアの真っ直ぐな熱意はどうも拒否しづらかった。

 湯浴みを施され、真っ(さら)の白いシュミーズを着せられた今のレーネは夫を待つには万全の態勢となっている。
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