瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 そんな前置きを入れてルディガーはレーネを見据えた。

「でも、君のことは長い間、本気で探し求めていた。会いたくて、あいつなりに情報を集めて必死だったんだ」

 ライラがこの城で保護されたのも、片眼異色と知ったうえでクラウスが秘密裏に指示を出したからだ。元々、誰を見つけようとしていたのか確認するまでもない。

 ルディガーがこうして時間を取ってまで、レーネに伝えたい内容など容易に想像できた。

 そばでクラウスを見てきて、彼の性格をある程度把握しているからこそ口を挟んできたのだろう。国王はその立場に関係なく、いい友人に恵まれている。

「ええ、わかっていますよ」

 微笑を浮かべるレーネにルディガーは愁眉(しゅうび)を開く。ところが次に彼女から紡がれた言葉は、思いもよらぬものだった。

「ただ、あなたは大きな勘違いをしています」

 笑っているのに声も表情も冷ややかだ。ルディガーも、そばで見守っていたセシリアも虚を衝かれる。

「彼が私をずっと探していたのは事実でしょう。でもそれは、あなたが想像するような動機ではありません」

 涼しげに否定され、ルディガーは困惑気味に尋ねる。

「というと?」

「どうもこうもお会いしたときから私と陛下の関係は一目瞭然だと思いますが」

 レーネが纏う空気は冷たくなる一方だ。丁寧な口調がそれを増幅させる。まるでなにもかもを()ねのけるような……。
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