一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る



 病院から少し歩いた歩道脇に停まっていた車に、雅臣とともに乗り込む。車が走り出してから、私はまっすぐ前を向いている端正な顔をちらりと見上げた。

「どうして、来たんですか?」

 顔を動かさず、目だけで私を見て彼は静かに答える。

「義母になる人だ。挨拶をするのは当然のことだろう」

 至極まっとうな内容なのに、彼が口にすると違和感がすさまじい。

 車に揺られながら、私は窓の外に目を向けた。もうすぐ十九時だというのに、空はまだうっすらと明るい。

「ありがとう、ございました」

 口にした言葉が、無音の車内にぽつりと落ちる。

 あまりに突然だったけれど、母はうれしそうだった。私の結婚相手と話ができたことを、ものすごく喜んでいた。

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