一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
自分のことよりも私のことを優先して考えてきてくれた彼女らしく、私が幸福であることがなによりも母の幸福なのだと、あらためて感じさせられた。
ふっと笑みが漏れてしまう。
空きベッドの目立つ寂れた六人部屋で豪勢な花束を抱えた二條雅臣は、異次元に紛れ込んだおとぎの国の王様のようだった。
「まさか、あなたがわざわざ来てくれるなんて、思ってなかった」
「おまえは本当に、俺をなんだと思っているんだろうな」
切れ長の目を私に向け、彼はため息をこぼす。薄暗い車内で、不思議と顔がよく見えた。
はっきりとした二重瞼に大きな黒目。凛々しく切れ上がった眉は男らしくて酷薄そうな雰囲気を放つくせに、唇は情の厚さを示すみたいにすこし厚めだ。
改めて見ても、整った顔立ちには欠点が見つからない。
そりゃそうだよね、と思った。