一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
急激な不安が足もとからこみ上げて、全身が震えた。魂を抜かれたみたいに崩れ落ちそうになって、どうにか堪える。
どうしてだろう。床が突然ぬかるんだみたいに、うまく立っていられない。
よろけそうになった瞬間、大きな手に肩を掴まれた。私を抱き寄せるようにして、二條雅臣ははっきりと口にする。
「ご安心ください。彼女――愛のことは、私が一生をかけて必ず幸せにします」
芯のある低い声が、どういうわけか私の胸を震わせた。
この場限りの、中身のない言葉だってわかっているのに。私の肩を支える手があまりにも力強くて、泣きそうになる。
ベッドで小さく肩を震わせている母から、傍らに置かれた花束に目を移す。とても明るくて華やかな色合いの花束は、よく見ると母の好きな花ばかりが組み合わせられている。
私はそっととなりに立つ彼を見やった。
強引で女好きで、お金や権力にモノを言わせる傲慢な二條雅臣は、憐れむでもなく呆れるでもなく、ただ静かな目で母を見つめていた。