一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「ていうか! さっき、私のお尻触りましたよね?」

「尻? そういった俺を惑わせるような部位に触れた記憶はないな」

 首を傾げて本気で考えこむ素振りをする。意地悪そうな目で私を見下ろす彼の肩を、握った右手で叩いた。

「なによ! どうせ私には、女としての魅力なんかないわよ!」

 勢いのまま振り上げたこぶしは、大きな手のひらにあっさり掴まってしまう。思いがけずあたたかな手に、どきりとした。

 雅臣は笑っていた。きりりとした強い目を柔らかそうに細めて、なにか愛しいものでも見るみたいに微笑んでいる。

「かわいいやつ」

 形のいい唇がこぼした言葉に、頬が燃えた。掴まれていた手をとっさに引き抜く。耳のうしろで鼓動が響く。バクバクとうるさいくらいに。

「なんだ? 照れてるのか」

 ニッと口角を上げて、端正な顔が私を覗き込む。

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