一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「もっと言ってやろうか」
せっかく逃れた手をふたたび取られ、引っ張られた。体を固定したシートベルトがぐっと伸びる。
「かわいいよ、愛」
やさしい表情で言われて耳まで熱くなる。全身に火がついたみたいに、熱くてたまらない。
目を合わせていられずに顔を逸らしても、耳もとでささやかれる。
「おまえは十分、魅力的だ」
ぎゅっと目をつぶった。心臓が忙しなく跳ねて、息ができない。
「ち、近寄らないで、色ボケ御曹司!」
間近でのささやきにぞくぞく背中が痺れるのを我慢しながら、吐き捨てた。
甘いささやきなんて、どうせ言い慣れているに違いない。
精いっぱいの悪口を吐いたのに、彼の気配は遠ざからない。それどころか楽しそうに口にする。
「なぜ? 夫が妻に近づいたらいけないのか?」