一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
そういえば一度だけ、森に迷い込んだことがある。
めずらしい色の蝶々を追いかけて、普段は足を踏み入れないけもの道に入ってしまったのだ。
戻る道がわからなくなって泣いていた私を見つけてくれたのは……。
ああ、だめだ。思い出せない。
唯一覚えているのは、大きくてあたたかな手が私の手をしっかりと握ってくれていたことだけ。
あれは父だったのだろうか。
泣きべそをかく私を、「泣くな」と不器用に励ましながら、森を抜けるまでしっかりと手をつないでくれていたその人は――。