一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
 

***


「愛」

 名前を呼ばれて顔を上げた。ソファに座っている私を覗き込んでいるのは、スーツ姿の雅臣だ。会社帰りらしく、ネクタイを緩めながらキッチンの方に視線を移す。

「夕食の時間だそうだ」

 ぼうっとしている私に、彼は小さく息をついて手を差し出す。なにも考えず条件反射のようにその手を取ると、ソファから引き起こされ、食卓まで連れていかれた。

 雅臣にエスコートされるままダイニングチェアに腰かける。彼が正面の椅子に座ると、楓さんがどことなく遠慮がちに料理を運んできた。

「今日は肉か」

「はい! 楓特製のステーキシチューですよ!」

「うまそうだ。な、愛」

「え? はい、そうですね」

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