一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
湯気を立てているお皿に目を落とすけれど、色彩が薄れてしまって、それがなんの料理なのかよくわからなかった。デミグラスソースなのかホワイトソースなのかも見分けがつかない。もちろん、食欲だって湧かない。
母が亡くなって一週間。なにを食べても、なにを飲んでも、味がしなかった。
一日中起きているような、眠っているような時間のなかで、心と体がばらばらになってしまったみたいだ。
私は生きることを放棄するように、すべてのことに対して無気力になっていた。家の外にも出ず、毎日ぼうっとソファに座っているだけ。
楓さんが気を利かせて話かけてくれたり、出かけようと誘ってくれたけれど、どうしてもうまく反応することができなかった。
このままじゃいけない。
そう思うのに、今までどうやって笑っていたのか、どうやって生きてきたのか、どうしても思い出せないのだ。