一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る



「……それじゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 朝出かける雅臣を玄関で見送って、そのままソファに寝転ぶ。

 ぼんやりと高い天井を見ていると、自分の輪郭がなくなって空気と一体化したような気分になった。

 あの絵を見せてから一週間後、母は息を引き取った。

 窓の外には五月の終わりの青空が眩しいほどに広がっていて、地上よりもずっと天空に近いその場所から静かに飛び立っていったように、母の顔は穏やかだった。

 お通夜や告別式は坂城さんが主体となって進めてくれたから、私は喪主の立場でありながら、ほとんどなにもしていない。

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