一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
私の手を掴んだままの彼から、私は視線を逸らした。
「キャラメル味、食べるのはじめてですか?」
「キャラメル味……というか、これ自体はじめて食べる」
「えっ」
ポップコーンを食べたことがなかったの?
驚いていると、雅臣は今度は自分の手で紙容器から菓子をつまみ上げた。
「鳥のエサみたいなものかと思ってた」
ひどい言い様の御曹司は、掴んでいた私の手に指を絡めて恋人繋ぎをすると、シートに深くもたれた。
映画の予告編がはじまり、館内を照らしていた照明がさらに落ちる。
心臓は静かに響いていた。
右の手から流れ込んでくるぬくもりが、全身に穏やかに広がっていくような気がした。大きな手の感触は不思議と私の心を落ち着かせてくれる。