一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 雅臣の手に触れていると、味のしなかったポップコーンのフレーバーが鼻の奥でふわりと甘やかに香る。心がほどけていくのを感じながら、私は薄暗闇の中で静かに目を閉じた。






「せっかく連れて行った映画館で、爆睡されるとは思わなかった」

 呆れた口ぶりでハンドルを操作する雅臣に対して、私は助手席で縮こまる。

「ごめんなさい……」

 だってあまりにも心地よかったんだもの。

 薄暗い映画館で座り心抜群のソファに腰かけ、雅臣の手のぬくもりに安心しきっていた私は、いつのまにか彼の膝を枕にするようにして寝入っていたのだ。

 自分でも気づかなかったけれど、どうやら私は寝不足だったらしい。

 二十帖を超える寝室の中央に置かれたキングサイズのベッド。あの広すぎる部屋では、うまく寝られないのだ。なんだかとても寂しくなってしまって。

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