一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「まったく」
そう息をつきながらも、雅臣の表情はなんとなく楽しげだ。
「まあいい。次は寝入る暇もないだろうよ」
そう言って連れてこられたのは、印象派を代表する有名な画家の展覧会だった。
「あ、これ、見たかった展示だわ」
平日なのに入口には行列ができている。けれど雅臣が係の人に掛け合うと、私たちは別の入口から中に案内された。蒸し暑さの中で並んでいる人たちを横目に、得意なようなうしろめたいような気持ちになりながら涼しい館内へと足を踏み入れる。
手渡された音声ガイドを耳に装着していると、ここのところ落ちっぱなしで変化のなかった気持ちも少しだけ沸き立ってくる。
「おまえは画家の娘だったな。いったいどんなご高説を賜れるのか、楽しみだ」