一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
同じようにイヤホンを装着しながら皮肉っぽく唇の端を持ち上げる雅臣に、むっとする。
「私には一般人程度の知識しかないですよ。そういうあなたこそ、美術品を蒐集していてもおかしくない立派なお家の生まれなんだから、さぞかし絵画への造詣も深いんでしょう」
言い返す私を「ふん」と鼻であしらい、彼はさっさと歩き出す。
雅臣とともに、混み合う館内を時間をかけてゆっくりと回った。それぞれの作品に画家の想いが込められ、そのひとつひとつにタイトルがつけられている。時代を追うごとに変化していく画風を眺めながら、ぼんやり父のことを思い出した。
ブースをまわるごとに新しい絵と出合い、その都度、心を覆い隠していた淀みが薄れていくような、そんな不思議な気分になった。
「知識勝負は引き分けだな」
「……今回は、それで許してあげます」