一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る



 地上四十五階にあるフレンチレストランからは、東京のビル群を一望できるような夜景が広がっていた。人々の営みが小さな光になって散りばめられた宝石箱みたいな景色を見ながら、ふと正面で優雅にカトラリーを扱う彼を見る。

「ずいぶん高いところだけれど、平気なの?」

「夜だからな」

「……ふうん。『夜』は平気なのね」

 はっきりと地上の景色が見えないからだろうか。意地悪っぽく見ている私の視線に気づき、雅臣は一瞬しまったという顔になり、すぐに気を取り直したように食事を続けた。

「どうだ、ここの料理は」

「ええ、すごくおいしいです」

 今朝までは楓さんの料理も坂城さんが手配してくれたケータリングの食事も、なにもかも味がしなかったのに、今は少しだけ味覚が戻っていた。

 久しぶりに外に出て、気分転換ができたからだろうか。

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