一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 海外セレブも数多く訪れるという五つ星のラグジュアリーホテル、『グランド・フロンティアホテル』。ここで提供される料理を食べたいと口にしたのはいつだっただろう。雅臣はそんなことまでしっかり覚えていてくれたらしい。

 上質な空気が漂う最高級のレストランは、それに見合った上品なお客で埋まっている。私は背筋を伸ばし、坂城さんから学んだマナーを思い出しながら食事を進めた。

 人々の落ち着いた会話を邪魔しない音量で、うつくしいピアノのBGMが流れている。ゆったりとした空気のなかで、私はどことなく張りつめていた。

 一流の人たちにこそふさわしいこの場所で、私の存在は浮いていないだろうか。

 どんなにうつくしく着飾っても、どんなに優雅にフォークやナイフを扱っても、私が私であることに変わりはない。

< 188 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop