一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 私の手もとを見て、椅子に腰かけたその人は鼻先で小さく笑った。

「なにか勘違いをしているようだな」

「え……」

「おまえはうちに所蔵されてるその絵を、見たことがあるのか?」

「いえ……小さい頃に見たことがあるかもしれませんが、覚えてなくて」

「瀬戸口アキラといえば、今やラクガキ程度のものでも数百万の値がつく。うちにある絵は大型だし、数千万……いや、熱心な蒐集家なら一億くらい出すだろう」

 想像すらしていなかった単位が飛び出して、一瞬呼吸ができなくなった。ゼロの数がとっさに思い浮かばないくらいの金額に、目の前が暗くなる。

「そんな……」

 前に差し出していた封筒を握りしめる。アトリエの家賃程度の金額で買い戻せるつもりだった私は、あまりにも浅はかだった。

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