一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「当然だ。エッグベネディクトは朝食だろ。泊まりもせずにわざわざ朝から食べに来るとでも思ってたのか」

 不遜な物言いなのに、その目はどこか柔らかい。

 胸が高鳴って仕方なかった。

 この人は、どうしてそんなふうに私を見るのだろう。

 イジワルだったり、優しかったり、つかみどころのない雲みたいにふわふわしているかと思えば、力強く抱き寄せてくれたりする。

 雅臣の考えていることが、わからない。

 ただひとつわかるのは、彼がなにひとつ持たない私と違い、すべてを手にしている、住む世界が異なる人間だということだけ。

 今日一日楽しかった反動だろうか。気持ちが急速に下降していく。お酒を口にしたのに、高揚するどころか胸の奥が痛みだす。

「……結婚、終わらせてもいいですよ」

 気がつくと、そう口にしていた。

「は?」

< 192 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop