一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「俺から離れて、おまえはどうやって生きていく?」
まっすぐ注がれる視線を受けとめられない。目を逸らし、胸の痛みをごまかすように私は微笑む。
「そうですねえ」
とても現実とは思えない豪勢な部屋の中で、霧がかかったようにはっきりとしない未来をぼんやり想像する。
「母が亡くなってひとりになったことだし、自由気ままに好きなところに行って、のんびりと過ごしていければいいかな」
思ってもいない言葉が口をついて出ていった。
好きなところなんてない。
行きたい場所なんて思いつきもしない。
だって私の世界は母がすべてだったのだ。
「誰にも気兼ねせず、誰にも関わらない」
笑っていたつもりなのに、声が掠れる。
「ちょっと寂しいけれど、そうやってひとりで生きていければ――」