一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
落ち着いているのに、どことなく楽しそうな声音だった。
顔を上げると、余裕たっぷりに椅子に座った彼と目が合う。切れ長の目をいたずらっぽく細めて、その人は口にする。
「おまえが、俺と籍を入れる」
「……え?」
言葉の意味を理解する前に、彼は続けた。
「おまえが二條の人間になれば、あの絵を持ち出す権利を得られる」
「二條の人間になるって……」
「俺と結婚するってことだ」
凛々しい眉を片方持ち上げて、その人は冷たく笑う。
籍を入れる……つまり、結婚。
意味をのみこめなかった言葉が頭の中で輪郭を結んだ瞬間、ドクッと心臓が弾けた。
背中を冷たいものが滑り落ちる。見せつけるように長い脚をゆっくりと組むその人を、まじまじと見つめる。