一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
巨大グループを率いる大企業のトップに立つ人間が、どれだけの重責を負わされるのか、私には想像もつかない。なんとなくわかるのは、そんな人の奥さんともなると、相応の覚悟が必要になるということだけ。
「あれのためにも周りに認められる働きをしなければと、私は懸命に働いた。そして新規プロジェクトのための視察中に、容体が急変して、あれは逝ってしまった」
父親の話を黙って聞いていた雅臣が、ふいに口を開いた。私と繋がった手には、ずっと力が込められている。
「……そんな、取って付けたような話、信じられるか。だいたい、あんたは母さんが死んですぐ、あの女と再婚しただろ」
「依子の遺言だったからな」
「……は?」
「清香は会社のために人生をささげていた女だ」
伊都さんと善くんの母親である美貌の女性。サロンの椅子に上品に腰かけ、優しく微笑んでくれた彼女の姿が脳裏をよぎった。