一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
 当時秘書だったという清香さんと雅臣のお父さんは、あるとき依子さんに呼び出され、病室で告げられたのだという。

 ――清香さんにしか頼めない。私に代わってこの人を支えることができるのは、あなただけです――

「そう言って、依子は私たちに頭を下げた。逝ってしまう一週間前だったな。まるで自分の死を予期しているようだった」

「そんな……話」

 信じられるか、と吐き捨てようとする雅臣の手が、震えている。私はぎゅっと彼の手を握り締めた。

 雅臣が、ずっと知り得なかった真実。

 きっと知ることが恐ろしくて、踏み込もうとしなかった過去。

 どんな結末でも、私は雅臣を支えよう。そう心に決めて今日、この場所にやってきたのだ。

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